ここはシリ・エトク・ラ・ウシ、北海道最北端「地の涯」であるが、流氷は国境を超え流れつき、オオワシ、オジロワシ、海の妖精クリオネ、トド、アザラシ、クジラまでがやってくる。神々が創造したままの山や森には、ヒグマ、エゾシカ、シマフクロウが生息。シトレスミレやエゾツガザクラ、可憐なウメバチソウ、チングルマなど高山植物が咲き乱れる、未だ自然の宝庫である。

こういった稀少種の動植物生息地や、自然の厳密な保護を求められる環境がある知床は、国立自然公園に認定され、羅臼町は、国設鳥獣保護区に指定されている。しかし、この残り少ない僅かの自然を愛するがゆえに多くの人々が、その自然が持つキャパシティをはるかに超えて押し寄せている。昨今、知床観光客の人数は、道内全体同様、減少傾向にあるものの、行政サイドの整備は追いつかない。無断立ち入りでの植生の踏みつけ、盗掘、鳥獣繁殖の撹乱、ゴミの置き去り、廃棄物の投げ捨てまで行なわれている。観光して楽しみなさいとされる自然そのものが荒廃。さらに海の幸、山の幸を枯らし、観光を呼びかけている羅臼町そのものの衰退へとすら繋がっている。

この最中、世界遺産に推挙となる状況が生まれつつある。これが、自然保護の観点からは諸刃の剣であることは、地元の者にとっては自明でありましょう。自然を楽しむ前に自然を守るといった視点に、知床を訪れる全ての方々と共に立てる活動が急務でしょう。自然を愛し、楽しみ、それゆえ保護のみならず再生へ、といった観点までの積極的な取組みが社会から求められています。環境保護を通しての北方四島との国際交流、自由な航海の往来の中での自然享受。心の病、体の不自由を持つ人などあらゆる人々へ機会付与できる状況の構成といった完全参加のエコツアーを実施可能なスタンス。これらこそ世界基準であり、地元にとってその土台の上に世界遺産として誇る知床があるべきではないだろうか。

そのためには、物言わぬ自然の代弁者たるインタープリター〔自然通訳者〕の養成からはじまる環境保護教育学習体制の確立が望まれるものである。また、このシステムを通して、時代を担う子供たちに自然体験の中から自然環境の整備と保全の心がけを学んでもらうことこそ、未来への欠かせぬ保護対策と考えます。自然の宝庫を守るべく目的を同じくとし寄り集い、ゴミ拾い、リサイクル等のボランティア活動を日常的に行ない、訪れた人々を暖かく迎え入れるルール、住民として誇りうる接客姿勢を作り、人権と自然の生態系を保護・育成し、地域社会全体の利益向上を図ることを目的として、この法人立上げを期するところであります。

平成16年1月31日
特定非営利活動法人 しれとこラ・ウシ
設立代表者 [住所] 北海道目梨郡羅臼町八木浜町24番地 [氏名] 湊 謙一